2017年11月07日

シアトリカル・ライブ『MARS RED〜THE BLACK PRINCE〜』

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11月の連休は、『はみだしっ子』『THE BLACK PRINCE』と、ぜいたくな演劇鑑賞三昧でした。

さて、音楽朗読劇シアトリカル・ライブのシリーズを手掛ける脚本・演出家の藤沢文翁さんは、ロンドン大学で演劇を学んだことで有名ですが、私がこれまで見た劇の舞台はすべてイギリス以外。
今回、ついにイギリスの百年戦争を手掛けるというので、ウキウキと見に行きました。
なんせ百年戦争って、最後のほうのジャンヌ・ダルクくらいしか日本では知られていませんものね。
シェイクスピアの史劇でも、ばら戦争のほうが人気が高いし。
そこをあえて百年戦争
さらにはエドワード黒太子を主役に!
いったいどんなお話になるのか、期待するなと言う方が無理です。
以下、ネタバレレビューとなりますので、発売予定のDVDでお話を知りたいという方は回れ右お願いします!


それだけ期待しまくって見に行った朗読劇だったのですが……う〜ん、残念ながら今回の脚本は入り込めなかったなあ…。
あまり真剣に予習していかなかったので、見ている最中は「え? あれ? これってあり? マジ? こんなだっけ?」と違和感と闘っている程度だったのですが、ラストシーン周辺では「え〜っ? これってどうするの〜?!」と頭を抱えてしまいましたから。
たとえるなら、映画『柳生一族の陰謀』のラストのほうで、徳川家光柳生十兵衛に斬られちゃったのを見たときの気分というか……(たとえが古すぎる)。
どうするの、史実とこんなに違っちゃって!??がく〜(落胆した顔)
日本ではあまり知られていない時代のお話だから、好きにやってもいいという判断なのかな〜?

うろ覚えのところも多かったので、帰宅してから史実を再チェックしました。
やっぱりエドワード黒太子は弟より先に死んでいるし、弟のジョン・オブ・ゴーントエドワード黒太子の息子のリチャード2世と敵になったり味方になったりしながら、そこそこ長生きしています(リチャード2世の後に王になるヘンリー4世ジョンの息子)。
一方、劇中でジョンの親友として描かれているヘンリー・パーシーは、かの有名なホットスパーの父。
ジョンの息子であるヘンリー4世に冷遇され、後に親子そろって反乱を起こしているんですよね。
(これを描いたのがシェイクスピア『ヘンリー4世 第一部』)
まあ、寝返りは当時の日常茶飯事だから、今回のストーリーとは関係ないでしょうが…。

それから、今回は女傭兵隊長として描かれているジョン・ホークウッド
すごくなじみのある名前だと思っていたら、フィレンツェサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂にでっかい肖像画のある人じゃないですか!
そう、彼の傭兵隊長としてのキャリアは、イギリスを出てイタリアに渡ってから始まっているんですよ。
百年戦争で死んではマズすぎるキャラでは……(^_^;)(^_^;)(^_^;)

これまでの文翁さんの脚本は、大胆にフィクションを交えながらも史実におおむね沿って描く、NHK大河ドラマのような作風だったので、それを期待していったら戦国BASARAになっていたというのが一番の驚きでした。
秀吉信長の腕の中で息絶え、若き幸村上杉景勝を守って死ぬ……くらいの改編ですよ、これ。
まあ、以上は歴史オタとしての感想です。

どんなに史実と違っても、劇として感動できれば私は文句は言いません。
その劇としての盛り上がりが、残念ながらいまひとつだった。
なぜなら出てくるキャラクターが全員、善人なんです。
己の欲や嫉妬心をむき出しにしたり、それを抑えるために葛藤したりするキャラがいない!
兄は英雄だし、弟は兄大好きだし、親友は友人思いだし、傭兵隊長は将軍に忠実だし、将軍は誠実だし、バンパイヤも倫理観まっとうだし……うう……『リチャード三世』『はみだしっ子』を見た後だから余計に感じるのかもしれませんが、人間の汚さがまったく出てこない!
だからキャラクターがすごく薄く、浅く感じられてしまいます。
これまでの朗読劇はここまで平板じゃなかったんだけどなあ。

声優さんたちが達者に演じれば演じるほど、わかりやすいアニメの世界にいるような既視感を感じてしまって、その意味でキャスティングが逆効果になっていました。
ただ一人、山路さんの演じるゲクラン将軍だけが比較的リアルに見えたのは、やはり彼が演劇畑の人だからでしょうか。

なので文翁さん、次回はぜひ、いつものように声優さんのポテンシャルを根こそぎ抉り出すような、鳥肌が立つような物語を描いてください!
今回はほとんどの方が通常営業だったので、残念ながら新しさを感じられませんでした。
たとえ美しい衣装がなくても、たとえ豪華な生演奏がなくても、そこに素晴らしい演技があれば私は満足なので!(勝手な主張)

イギリスの中世を取り上げると、シェイクスピアがライバルになってしまうのがとっても難しいところだと思います。
でもだからこそ、シェイクスピアには描けない物語を紡いでほしい。
大好きな文翁さんの次回作に期待したいと思います。

そういえば、ペストにかかったはずのエドワードは、なぜ終盤あんなに元気だったんだろう?
何か説明ありましたか?たらーっ(汗)

以下、コメントお礼です(くまひよさん)。

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くまひよさん

早速コメントありがとうございます!
グレアムは皆を大切に思うあまり、逆に皆を傷つける行動をしちゃうんですよね。
自分にとってつらい行動が、イコール皆を守る行動ではないと気づくことができないんですよ。
その辺はアンジーのほうが大人だと思います。
自分を保つことを心掛けつつ、周りを気遣うことができるから。
グレアムのアンジーへの態度は、やっぱり甘えですよ。
アンジーのキャパの広さをわかっているから、多少の嫉妬も交えつつ、ああいう態度を取るんでしょう。
まったく、器が小さい奴だ!
器が小さいのに、自分が犠牲になることで何とか皆を守ろうとしちゃうところが、本当に困った愛しい奴だ。
年齢を経ると、各キャラへの気持ちがちょっとずつ変わってくるのも面白いなあと思います。
続編、ぜひやってほしいですね!
切望!!
posted by 管理人 at 13:00| 舞台・映画レビュー