2019年06月18日

『Taking Sides 〜それぞれの旋律〜』と『信長の野望大志 夢幻 〜本能寺の変〜』

見てからかなり経ってしまいましたが、演劇の感想を2演目分。
『Taking Sides 〜それぞれの旋律〜』
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加藤健一事務所の演目は、このところコメディ中心に見ていたのですが、今回はテーマが興味深いのと、文学座の今井朋彦さんが出演されるということで、足を運びました。
公式HPによるストーリーは以下のとおり。

第二次世界大戦後のドイツ・ベルリン。ナチスに勝利した連合軍により、非ナチ化政策 ― ドイツ社会からのナチ体制徹底除去が行われていた。 当時、世界的に偉大なオーケストラ指揮者としてドイツで活躍していたフルトヴェングラー(小林勝也)は、ヒトラーの寵愛の下、戦時中もナチス政権下のドイツに残って活動を続けていたことから「ナチ協力者では―――?」と戦犯の疑いをかけられ、連合軍取調官アーノルド少佐(加藤健一)に尋問を受けることになり……

舞台装置は瓦礫の中に建つ連合軍司令部のオフィス。
冒頭で背景に終戦後のドイツの実写フィルムが映し出されます。
解放直後の強制収容所も、ナチスドイツの紋章がビルの上から落とされる有名なシーンも。

元々は保険屋だというアーノルド少佐は、見たこと聞いたことを決して忘れないという稀有な能力ゆえに、取調官に任命された、と秘書に語ります(ただし固有名詞は苦手)。
秘書のエンミヒトラー暗殺計画を立て、処刑された将校の娘。
そこに、両親を強制収容所で失ったユダヤ人のアメリカ軍青年将校、デイヴィッドがやってきます。
ナチス政権に辛酸をなめさせられたにもかかわらず、音楽を愛する彼らは偉大なる指揮者、フルトヴェングラーを尊敬し、彼の潔白を信じています。
「あのバンドマスターをかばう気が知れない!」と吐き捨てるように言うアーノルド

ついに取り調べの場に現れたフルトヴェングラーは、訥々と、しかし信念を持って自らの行動を語ります。
彼がどれだけ説得力のある言葉を並べても、彼を弁護する人間や証拠がどれだけ出てきても、なぜかアーノルドは頑なにそれらを否定し、フルトヴェングラーヒトラーの庇護を受けたナチス協力者だと決めつけます。
ベルリンフィルで第二バイオリンを担当していたローデの讒言で、揺るぎなく見えたフルトヴェングラーの証言がついにぐらつき始め……。

タイトルの『Taking Sides』には「〜の味方をする」という意味があるそうです。
このタイトルのとおり、観客はアーノルドフルトヴェングラーのどちらに正義があるのか、探りながら見ることになります。
それぞれの主張はまるでオーケストラの楽器のように固有の旋律を奏で、時に激しく、時に穏やかに曲を紡ぎますが、決して混じり合うことはありません。
どんな劇でも基本は同じ構造のはずなのに、なぜかこの劇では「オーケストラ感」を強く感じました。
そして曲が終わったとき、観客は知るのです。
それぞれの人間にそれぞれの正義があり、譲れないものがあり、言い分があり、良きものと悪しきものにはっきり分けることなどできないのだと……。

今回個人的に面白かったのは、フルトヴェングラー役の小林勝也さんの演技でした。
途中で言葉に詰まったり、同じ言葉を繰り返したり、間が空いたり……。
滔々とセリフを語るシェイクスピア劇ならあり得ないことですが、私にはすごくリアルに感じられました。
まるで本当にフルトヴェングラーがそこにいて、アーノルドに責め立てられ、動揺して言葉に詰まっているように。
カーテンコールでご本人が「セリフが多くて大変だった」とおっしゃっていたので、もしかすると素で言い間違えていたのかもしれませんが(^_^;)、とても効果的だったと思います。
カトケンが立て板に水の如くしゃべるので、好対照でした。

それにしても、ナチスに媚びて名声を得、戦犯の誹りからも巧みに逃れたカラヤンがディスられること、ディスられること(笑)。
この劇を見る前に、社会人オケでチェロを弾いていた同僚からフルトヴェングラーカラヤンのことを聞いていた(フルトヴェングラー「振ると面食らう」と言われるくらいに指揮が走りまくって、オケが置いて行かれそうになる。カラヤンは単にプレゼンが上手なだけ)ので、いちいち頷きながら聞いてしまいました。

一番印象に残っているのは、今井さん演じるローデの言葉。
「独裁政権下で生きることの恐怖は、体験した者にしかわからない。
気付いたら何も自由に言えなくなっているんだ。
そして彼らは恐怖とともに、最高の快楽も差し出すんだ」

ナチス党員になったことで、そして、オケからユダヤ人がいなくなったことで念願のベルリンフィルの団員になれた彼の言葉には、本当にいろいろと考えさせられました。

さすが加藤健一事務所
素晴らしい舞台をありがとうございました!!


『信長の野望大志 夢幻 〜本能寺の変〜』
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昨年末に見た『信長の野望・大志 -冬の陣- 王道執行 〜騎虎の白塩編〜』の続編です。
根本正勝さんが、引き続き上杉謙信役で出演するというので、見に行ってきました。
かっこよかった!!揺れるハート
美しかった!!ぴかぴか(新しい)
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え〜と、ここでレビューを終わってもいいですか?
いや……う〜ん。
では、もう少しだけ。

『刀剣乱舞』もゲームですから、それはそれはたくさんの刀たちが登場します。
しかし、舞台化の際はその中から一部の刀だけを選んで、時代や出来事を絞り込んで物語を作っています。
だから面白い!
だから感動する!
一方、この『信長の野望』シリーズは、キャラを出しすぎです!!
主要人物以外は出てくるたびに「あれ、この人誰だっけ? どこの陣営だっけ? 史実ではどういう人で、この劇の中ではどういう設定になっているんだっけ?」と思い出すのに忙しくて物語がつかめない!
思い入れもできない!
光秀役の役者さんなんてすごい熱演なのに、ああ、このエネルギーがもったいない。
もっとちゃんとしたストーリーの中で演じさせてあげたかった……。
プロットは面白いんだから、登場人物とストーリーを整理すればクオリティーがぐっと上がるのに……。

まだこの先もシリーズは続くようですが、今のままだと出演者目当ての観客以外は引き付けられないのではないでしょうか。
『刀剣乱舞』の舞台には、初見の観客をも引き込む魅力があります。
ぜひその辺りを研究して、より良い舞台を作ってほしいです。
今のままだと、次回はないなあ。
まあ、根本さんが出るならやっぱり一回は見るかも、ですが……。

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posted by 管理人 at 23:59| 根本正勝さん